甘いだけの恋なら自分でどうにかしている

二次会のカラオケに待ち時間があり、お店の前で待っていると「小千谷さん」と若槻が声をかけた。

「こんなタイミングでごめんなさい」
「ん?」

「お誕生日おめでとうございます」と、渡されたのは、紙袋とサーティワンの箱。

「え?」
「本当はさっきのお店で渡したかったんですけど、小千谷さん、人前で、しかも人の送別会とかに自分のお祝いされたりするの嫌いそうだから。
さっき買ってきたばかりなんで、カラオケで良かったら食べて下さい」
「ありがと。びっくりした。サーティワン、久しぶり。嬉しい。ありがと」
「ほら、小千谷さんの年と一緒だから。31ですよね」
と微笑む。

「はは。じゃあ来年は?」
「んー? 32だから、ミニー? ディズニーランド行きますか?」
「じゃあ33は?」
「んーサザンですかね?」 
「じゃあ、桑田佳祐の物まねで祝ってくれる? 見つめあうと素直にお喋りできない感じで」
「絶対、嫌です」と綺麗な笑みで返された。
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