甘いだけの恋なら自分でどうにかしている

「はひ?」
「鍵、返せ」
「鍵?」
「お前、ブラジャーに俺の家の鍵、隠しただろう」
「……はっ?」

この鍵は、課長のだったのか。

「すみません。何がなんだかわからないですが、謝らなければいけないことだけはわかります。すみませんでした」

温めておきましたなんて言えるはずがない。温める必要ないしね。
それにしても、しまう場所の悪さよ。
消毒でもしたくなったけど、いち早く返せといった顔をしていたので、そのまま手渡すと溜め息を吐きながら床に片膝を立てて座った。

「お前、本当に何も覚えてないのか?」

こくりと頷いた。

「まあいい。思い出せないことが幸せってこともあるからな」
「……」
「足、大丈夫か?」
「えっ? あっ?」
「見せて見ろ」
「足? ダメです。無駄毛が」
「お前がアイヌ人のようにぼうぼうだろうが、どうでもいい」

私はベッドに短座になったまま、課長につま先を向けた。そっと足の裏に課長の手のひらが添えられる。なんかこのシチュエーション、恥ずかしくないか。
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