甘いだけの恋なら自分でどうにかしている

「はっ?」
「あのせっかく来ていただいたので、お……お茶でも飲んでいきませんか?」
「なぜこの時間にお前の家でお茶を飲まなければいけない」

仰ることはごもっともだけど、課長にちょっと怖いのでもう少しだけここにいてくださいなんて甘えたこと言えるわけがないし、手土産のひとつもなく帰すのも心苦しかった。

「怖いんだろ」と、課長はあっさり私の本音を見破った。少しバカにしたような笑い方にイラッとはするけど、背に腹は代えられない。

「ず……図星です」
「大丈夫じゃないか」
「だってどうやって入ったかわかんないし、また犯罪者が来たら、怖いじゃないですか」
「もう一度盗りにくるか? 盗む物がねーってわかってたら来ないだろ」
「あ、課長。今、酷いこと言いましたね。責任をとって今日は泊まって行ってください」
「なんの責任だ」
「わかりました。私が出ていけばいいですよね。どこかホテル探します」
「こんな時間にホテル探すのか」

呆れたような顔で私を見たけど、一人でいるのは、本当に怖かった。
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