甘いだけの恋なら自分でどうにかしている

夕食は焼き魚が食べたくなり和食に決めた。席に着くと、一杯だけとビールを頼む。
先程の出来事が頭を過り、可愛い男の子だったなと胸を温める。
心地よく、やはりときめきは必要だと実感する。
まあ、あんな若い子とは知り合うきっかけもないからそこで諦めるのだけれど。

少しほろ酔いで駅へと向かうと、通りの向こうに課長を見つけた。
こちらにはまったく気づいている気配はなくて声をかけようかと思ったけれど、隣に女性がいたので慌てて顔を背けた。
勝手に独り身だと思っていたのだけれど、恋人がいたのかと心の中が一気にざわついた。
だって彼女から見たら、こんな迷惑な女が職場にいたらたまったものじゃない。
課長を泊めたことがあるなんて、知っているのだろうか。


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