一途な御曹司に身も心も奪われ虜になりました
ミッション8中村耀とお付き合い
菅原サイド

美羽ちゃんは自分のこととなると本当に疎い。

モテないし、推進課の立場としてなぜか自分自身を恋愛対象に考えていないから仕方ないけど、俺には分かる。

美羽ちゃんは耀さんに惹かれてる。

笑顔になって欲しいと願うのは確かに他の推進課を頼ってくる人にも思うのだろう。

でも笑顔にしてあげたいと思うのは耀さんだけに違いない。

そして耀さんに合うのは美羽ちゃんしかいない。

他人の感情に左右されてしまう耀さんにとって美羽ちゃんのような一流のアスリートこそ一緒にいられる唯一のひとなのだ。


俺は美羽ちゃんがテニス界で将来を期待されていたほど優秀な選手だったということを知っていた。

俺もテニスをやっていた人間だ。

吉木美羽の名前を知らないはずがない。

タフな試合、ズバ抜けた身体能力、対戦相手への丁寧かつ低姿勢の対応、試合中は決して感情を表に出さないポーカーフェイス。

将来有望な美羽ちゃんは怪我でその道を断念せざるを得なくなってしまったが、観るものの目を奪い、虜にする不思議な魅力を持っていた。

ふくらはぎの肉離れに加えてアキレス腱を切ってしまい、選手生命が絶たれた時でさえ、顔色ひとつ変えずにコートを出た。

その強靭な精神力はむしろ観客の同情を誘った。

吉木美羽の名を未だ記憶している人は俺以外にもたくさんいると思う。
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