恋色シンフォニー
10

こういう時、社内恋愛は面倒だと思い知らされる。
翌日、会社に行って、三神くんの姿を遠くから見ただけで、胸が痛んだ。

8月は半期決算月なので、仕事は山ほどある。
売上対策、リベート集計、下期対策、さらに、秋冬の棚替え準備、エトセトラ、エトセトラ。

いつかのように、火曜から金曜を外回りのスケジュールで埋めまくる。

がむしゃらに働こう。
そうすれば、痛みを感じなくてすむ。



肩が凝った……。
トイレの鏡の前で肩を回す。
すっかり習慣になっていたけど、きっかけを思い出して、切なくなる。

ため息をつきながら廊下に出ると、三神くんがいた。
静かに壁に寄りかかって、腕を組んで、正面の壁を見つめている。

何か言おうと思うけど、恋愛思考回路がショートしてるのか、頭は真っ白。

「しばらく練習とかで忙しいから会えないと思う。仕事無理しすぎないように」

三神くんは壁を見たまま、低い声でそれだけ言うと、行ってしまった。

……最初に、練習優先してって言ったの、私だし。
三神くんを責められない。

でも、何より。

前みたいな壁を作られてることに、ひどく動揺して、胸が痛くて、しばらく動けなかった。


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