恋色シンフォニー
4

演奏会の翌朝。
音楽を浴びた身体は、エネルギーが満ちている。
世界がキラキラして見える。
音楽の力、音楽をする人の力ってすごいと思うのは、こういうときだ。


出勤すると、いつも通り、三神くんが席に座って既に仕事を始めていた。
黒縁メガネの地味な三神くん。
昨日の出来事が夢だったんじゃないかと思える。



コピー機が紙を吐き出すのを見ながら、私もため息をつく。

何だかなぁ……。
いろんなことが納得できたけど。

三神くんが早く帰ってたのは、練習するため。

会議の調整が上手いのは、コンマスで、指揮者とオケを調整する役割に慣れていたから。

それにしても。

演奏の奥にある、練習量を想像する。
あんな演奏するのに、いったいどれだけ練習を積み重ねてきたのか。


ガコンっ

嫌な音がして、現実に引き戻された。
コピー機が紙づまりしたんだ。
ディスプレイの指示を受け、カバーを開ける。

「あれ、紙づまり? 手伝おうか?」
誰もいなかったOA室に、ちょうど三神くんが入ってきた。
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