愛してるなんて言わないで
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気持ちが少し落ち着いた数日後


私は依子に電話をかけていた。




--玲二さん、颯太にプレゼントくれたんだ。

良かったね?



「うん。離婚してからこんなに時間が経ってから色んな事に気づかされちゃったよ。」


--気付けただけ良かったんじゃない?

気付けないままの人だって世の中には沢山いるんだし。


「そうかな…

そうなのかな?

でも、今さらって感じだよね。

もっとちゃんと玲二と向き合ってたら、こんな終わり方はしてなかったのかもしれないし…」


--なにそれ?

今さら玲二さんに気持ちが戻ったか?


「バカ…そんなんじゃないけどさ。


長く一緒にいたから。お互いの性格なんて知りすぎてて…

大切な事も聞けないで勝手に決めつけてたことを後悔はしてるけど…。

玲二の待ち受け画面に颯太がいたことが嬉しかった。」


--って、いうことは玲二さんの今の奥さんもその待ち受け画面の事は知ってるはずだよね。


凄いよね。旦那の前の子供の待ち受け画面を受け入れてるんだから。




「そうだよね。きっと…知ってるよね。」



--玲二さん。もしかしたら結花との結婚よりも幸せになっちゃうかもよ?



声色でも分かる。

依子はニヤニヤしながら私を試してるに違いない。




「もし、それならそれでいいかな…?」


--綺麗事、言えるよねー。


「うん。

きっと口先だけの綺麗事かも。」


でも…


口先だけだったとしても

そう言える。



玲二と会わなければ愛人だった女と結ばれた玲二を今もずっと憎んでたに違いない。



不器用な彼の待ち受けが

計算されたものだなんて思わない…。


彼の正確は


長いことずっと一緒にいた私がよく知っている。



玲二の心には


嘘、偽りなくちゃんと颯太がいる。




それを知れただけで

結婚生活の全てが失敗だったと…



思わなくなった。


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