彼女の手を握り、無事だったことにホッとしつつ用心しておいて良かったと胸をなでおろした…

「麗奈、よく頑張ったな…」

「……うん。優香に連れて行かれてびっくりしたけど、逃げなくてよかった」

「……」

何も言わず、彼女の手をギュッと握りしめる。

「…昨日ね、優香が義兄をどん底に落としてほしいっていってきたの」

「どん底?」

「義兄さんがどん底に落ちれば落ちるほど、優香を必要とするからって……優香が言ってたの。それとね、高貴と幸せになって義兄さんをどん底に落としてあげてほしいってことも言ってた」

「なるほど…そう言うことか」

目を何度も瞬きし、不思議がる麗奈。

「何が?」

「実は俺は麗奈を守る為に、野村さんと手を組んだんだ。彼女は、一つ返事で常盤の中にいる麗奈を諦めさせる為に俺と手を組むと言ってきた…」

麗奈には、こう言ったが本当は常盤を追い払う為に野村さんを利用させてもらったという事は言わないでいい事だから余計な事は伏せておく。

「そうなんだ…いつの間にそんなこと話してたの?」

ちょっと、嫉妬めいた麗奈の口調に頬が緩む。

「彼女の休憩中に話しあったのが一回だけだ。それ以外は、2人で会う事はなかったよ」

それでも、ちょっと不満顔の麗奈。

ふふふ…可愛すぎだろう。

彼女の耳元で

『友人に嫉妬するほど俺が好きって顔に書いてあるぞ』

暗い車中でわからないが、きっと真っ赤になっているのだろう…慌てて頬を押さえ顔を隠す麗奈。

ダメだしとばかりに

『麗奈…可愛すぎ。好きだよ』

チュッとリップ音を耳に残して離れると、今度は耳を押さえて目を潤ませて見つめてくる。

このまま、キスして押し倒したい衝動に駆られ、彼女の頬に手を伸ばそうとした時にタクシーがマンション前に止まった。

頬に伸ばしかけた手を彼女の頭の上に乗せ撫でる。

「続きは、部屋に帰ったら話してやるから降りるぞ」

繋いでいる彼女の手を優しくひき、タクシーから降りてマンションの中に。

コンシェルジュカウンターから、慌てて出てくるコンシェルジュ。

「池上様、花崎様お帰りなさいませ。ご無事で何よりです」

「連絡ありがとう。おかけで助かったよ」

「いえいえ…私にできることをさせて頂いただけですので…」

謙遜する彼の咄嗟の機転でタクシーに麗奈を追いかけさせ、居場所を知ることができたのだから…近々、何かお礼をしよう。