嘘から始まる恋だった

「ご迷惑おかけしてすみません」

頭を下げる麗奈にコンシェルジュは

「いいえ…花崎様が笑顔で帰って来られたのなら、それだけでいいのです」

返す言葉が見つからないのか、苦笑している麗奈。

それを見てコンシェルジュは…

「ごゆっくりおやすみください」

エレベーターのボタンを押してくれた。

上昇するエレベーターの中は、2人だけのしばしの空間。

彼女の腕を引くと、スッと腕の中に入ってきて背中に回る彼女の手。

「……会いたかったよ」

小さな声で可愛らしくつぶやく彼女の頭を撫で

「俺も…たった1日なのに会いたくてたまらなかった」

お互い自然と見つめ合い、触れる唇…

そのまま彼女引き寄せ背をエレベーターの壁つけ、彼女の温かな唇に夢中になって触れていた。

ポンとなる止まった音

扉が開いて離れようとする唇を追いかけて塞ぐ。

目を何度も瞬きさせ、戸惑う麗奈を抱き上げて部屋の中まで歩いた。

「おろして…」

「ダメだ…このままベッドに連れて行く……」

「えっ…ちょっ…待って」

頬を染め降りようとする麗奈。

「待てない……俺のものになる覚悟できたんだろう?」

「そうだけど…その前に聞いてほしい事あるの」

「もちろん、聞くよ。聞かないと麗奈は踏み出せないんだろう⁈」

「うん…」

そう言いながら、すでに寝室の中に入っていた。

彼女を抱きあげたままベッドの端に座る俺は、そのまま彼女を膝の上に座らせた。

「……この体勢、恥ずかしい」

「…これからもっと恥ずかしい事するのに…」

からかうように彼女の唇に軽くキスを落とす。

「……バカ」

頬を真っ赤にして睨む彼女。

…愛しさが増すだけだと彼女はわかっていないようだ。

「で、俺に聞いてほしい事って?」

彼女の背を撫でなだめながら問いかける。

「……あの…ね。高貴も薄々気づいると思うけど、私、男の人と肌を合わせることが怖いの」

うつむく彼女の顎を指ですくい顔を上げさせた。

「SEXするの怖いって事だよな⁈」

「……」

コクンと頷く麗奈。

「私…が義兄を嫌う理由はね……あの人に……何度も無理矢理抱かれたの」

涙をポロポロ流す彼女の涙を拭うように頬に、瞼にキスをする。

なんとなく予想はしていた事だったが、奴に憎しみが増してくる。

「こんな…汚い私、抱きたく……ないよね?」

嗚咽する麗奈が愛しくてギュッと抱きしめた。
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