嘘から始まる恋だった

「俺に好きな女も奪われ、仕事もうまくいかず俺を追い詰めるつもりが逆に追い詰められて行き場を無くした奴がすがるのは彼女しかいなくなる。それが彼女と俺の狙いだった。そして…俺のいない間にお前を奴に合わせたのは彼女なりの最後の仕上げだったんだろうな⁈」

全てを見透かして満足気に私の背を撫でている。

「そうだったんだ…優香がそんなこと考えていたなんて…」

「麗奈に奴を近づけさせない約束を破ったのは許せないが…合わせて正解だったのかもしれないな…あいつもはっきりとお前に突き放されてわかっただろう⁈一気に気持ちが変わる訳じゃないだろうが、そのうち、側にいる女の気持ちに気づくだろう。彼女の幸せの為にも俺たちの仲を見せつけて諦めさせてやろうな」

なんと言うか…話を聞いていると高貴の中にあるしたたかな思惑にまんまと優香も義兄も操られているように思えてくるのは気のせいなのだろうが?

急な出張、タイミングよくあの場に現れたのも計画だったのではと…

「……そうだね。ところで、20時頃に帰るって言ってたのに、ビジネスバックも持たずにあの時間に現れるからびっくりしたんだからね」

遠まわしに探りをかけてみた。

「…そのことか。仕事を早く終わらせて麗奈に会いうために会社に報告がてら迎えに行ったんだ。そしたら、お前は帰った後でマンションのコンシェジュからタクシーに乗らず女とどこか行ったと聞いて…野村さんだと確信したよ。機転を利かしお前を追いかけさせて居場所を教えてくれたからあの場に間に辿りつけたけど……何かあったらどうするつもりだったんだ?」

「私だって、知らなかったんだもの」

睨みをきかす高貴に萎縮してしまう。

「まぁ、無事だったし、彼女のおかげで全て解決しそうだからいいものを…俺がどんなに心配したと思う?お前に何かあったら俺は出張に行った事を後悔するところだったんだぞ」

うまく丸め込まれた気がするけど…

「心配かけてごめんね…もう…大丈夫だよね?」

「あぁ、たぶんな…」

ぎゅっと抱きしめ合う私達に、さらなる試練が待ち受けているなんてこの時は思ってもいなかった。

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始めて一緒に迎えたクリスマスに、高貴から婚約指輪をもらい嬉し涙を流した。

そして…新年の挨拶がてら義父と母に婚約の報告をした。その場に、義兄と優香もいて義兄が優香を愛しむように見つめる目に、全ていい方向へ動き出した事に安堵していた。
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