主任は私を逃がさない
思ってもいなかった展開

 私は今、初めての体験を終えた。

 愛を交わす目的のホテルでシャワーを浴びることも。

 男の人に、一糸まとわぬ姿をさらけ出すことも。

 想像以上だった痛みを伴う特別な行為も。

 まだ息の荒い彼の体重を、ベッドの上に横たわりながら全身で受け止めることも。

 嵐のように目まぐるしく過ぎていった時間の全てが、私には初体験だった。


 黄昏色の照明の下で見る彼の素肌や、床の上に落ちたふたり分のバスタオルの白さが、これまでとは変わってしまった自分自身の証のように感じる。

 乱れたシーツの上で半ば放心状態の私は、ぼうっとしながらも確かな到達感を噛みしめていた。


「陽菜(ひな)ちゃん、今夜で女の子を卒業しちゃったね」


 ようやく汗ばんだ裸身を起こした彼が私の顔を見下ろしながら、からかうように優しく微笑む。

 自分の考えを見透かされたようなことを言われて、恥ずかしさに思わず頬を染めた。

 松本 陽太(まつもと ようた)。私の勤める会社に出入りする、リース会社のイケメン営業マン。

 この春に短大を卒業して社会人として働き始めたばかりの私が、人生で初めてお付き合いした男性だ。

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