太陽を追いかけて
*気付かない気持ち*


新学期が始まってからから1週間。


スマホの目覚まし時計で目を覚ますと、珍しくお母さんがせわしなく動いている音が耳に入った。


去年から一軒家じゃなくアパートでの暮らしだから、お母さんが何をしているのかも音で分かる。


ベッドから降りて部屋の引き戸をカラカラと開けると、もうそこはリビングで、キッチンもその部屋のはしっこに備え付けられてあるんだ。


「愛莉、おはよう」


お母さんが洗濯物の入ったかごを持ったまま、私に優しく微笑む。


「おはよう、お母さん」


私も目をこすりながら、笑ってお母さんにあいさつを返した。


「ねぇ、お母さん。今日は仕事じゃないの?」

「今日はお母さん、事務の仕事もスーパーのアルバイトも休みよ?昨日の夜、愛莉に言ったじゃない」

「え、そうだったっけ。ごめん、全然覚えてないや」


記憶を昨日に遡らせてみるけど……うん、やっぱり思い出せないや。


昨日、出された課題がたくさんあって結構切羽詰まってたから、それでお母さんの話を覚えていないのかもしれない。


お母さんは“ちゃんとお母さんの話聞いててよね”と冗談めかすように笑いながら、洗濯物を干しにベランダへ向かった。


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