心優が小笠原行きを了承したことは、長沼准将から秘書室に伝えられた。

 一日のうちに決意したその心優の心境を、お兄さんに親父さん達はどう捉えたのか。

 瞬きも出来ないほどに驚いていたのは、塚田少佐だけ。雅臣はわかっていたかのように、こんな時はさすがに徹底していて、いつもの中佐殿の横顔だった。

 仕事中は誰も聞いてこない。それどころか心優は、長沼准将に何度も隊長室に呼ばれて、席に座っていることが少なかった。

「御園大佐が喜んでいたよ。あと、葉月ちゃんは驚いていたかな……」

 やはり、御園大佐が奥様の為に思いついた引き抜きだったんだと心優は読んだ。

「できれば、もう来週には小笠原に来て欲しいそうだ」

 来週!? こちらを名残惜しむ間もないことに、心優は驚きを隠せなかった。

「言っただろう。澤村君は仕事は速いし、こうと決めたら、ミセス准将より強引に事を運ぶよ。まあ、それもそうなんだけれど。園田には来年の空母航行任務で、ミセス准将と乗船するまでに覚えて欲しいことが山ほどあるそうだ。あの大佐にいろいろと叩き込まれると思うから覚悟しておいたほうがいいよ。彼、女性を育て上げることも評判だけれど、それは裏を返せば『女性にも厳しいから』だ」
「御園大佐がわたしの教育をされるのですか。工学科の方ですよね?」
「うん。甲板のこと、パイロットのこと、そして空母艦のこと、さらにミセス准将の護衛について。彼は元甲板要員でもあって、元空軍管理官でもあって、元教官であって、御園准将の元側近という異例の経歴を持っている。『空と海の教育』となると最高の教育係てわけだ」

 空と海、そして御園のことを全て叩き込まれる。

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