すきだから
「もうお前の入り込むスペースなんてないからな」


千歳に唐突にそう言われて、雄太は思わず振り向く。
雄太が振り向いたのに気付いた千歳は、雄太を横目で見ながら嘲笑する。

「なっ・・・!」

「お前ももう知ってんだろ?邪魔するなよ?」

それだけ言うと千歳はまた歩き出した。


千歳の威圧は凄まじかった。

雄太は怒りと戸惑いの混じった表情を浮かべながらも、そこから動く事が出来ないでいた。


一方の千歳は晴れ晴れとした表情で、屋上へと向かっている。

先程までのイライラとした気持ちが、雄太に放った一言で全て解放されてしまったようだ。


屋上に出ると、青く澄み渡った空を眺めて大きく深呼吸をする。

決して綺麗な空気ではないが、その時は妙にすがすがしく感じられた。
そして柵に寄りかかると、空を見上げながらぼそりと呟く。



「これからは遠慮なんてしないよ。・・・覚悟してね、香苗」
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