すきだから
肌寒い風がぴゅう、と吹いて、思わず身を縮こまらせた。
季節はもう冬になろうとしている。


そうか、もう冬か。

去年の今頃はこの高校に入る為に、がむしゃらに勉強してたっけ。
隣には雄太がいて、学校帰りに図書館に行って勉強して・・・。

もう一年経つんだ。

たった一年前の事が、物凄く昔のように感じられる。
あの時は雄太と別れるなんて考えた事もなかったから、なんか不思議な感じ。

・・・人生ってわからないもんだ。


「何考えてるの?」

千歳にそう言われてハッと意識が戻る。
また自分の世界に入り込んでいたらしい。

千歳は少し笑いながら私の顔を覗きこんでいる。
その顔が思ったよりも近くて、思わず仰け反った。

「ごめん!なんでもないの。大したことは考えてなくて」

「アイツの事でも考えてた?」

「え?」

「俺といる時は、アイツの事考えるの禁止。・・・ていうか、もう考えんなよ」

顔は笑っているけれど、目は笑ってない。
その瞳に背筋がひやっとした。

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