すきだから
自信満々に言っただけあって、千歳は教えるのが上手い。

あれだけ考えても分からなかった問題がこんなにも簡単に解けてしまうと、逆に勉強が面白くなっていくから不思議だ。

そう思わせてくれるのも、千歳の教え方が上手いからなのだろう。

「多分この解き方はテストに出るだろうから、今やったやり方を覚えていれば難なく解けると思うよ」

「ありがとう!いやぁ、助かった!!」

千歳ははしゃぐ私を見てふっと笑みを零し、そしてふぅ、と息を吐いた。

「ちょっと休憩しようか。ずっと問題解いていて頭疲れたでしょ?」

「え?あ、もうこんなに時間経ってるのか。そうだね、少し休もうか」

ずっと座っていて身体が痛くなったようだ。

千歳は立ち上がると、「あ」に濁点が付いたような声を出しながら、グッと背伸びをした。

背伸び一つでも絵になる男。

だてに学年一モテる男じゃないな、とぼんやりしながら思う。

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