すきだから
「・・・ねぇ」

「ん?」

「どうしてさ、私なの?」

背伸びし終えた千歳に、私はそう問いかけた。
そう聞くのは少し恥ずかしかったけれど、どうしても聞きたかった。

なぜ、私なのか。

私のどこに惹かれる所があったんだろう。

「香苗ちゃんはさ、一目惚れって信じる?」

「・・・え?」

「香苗ちゃんを好きになったのは、理屈じゃないんだ」

千歳は私をじっと見据えながら、静かに語る。

「一目惚れだよ。廊下を歩いている香苗ちゃんを見かけた時に、俺の心にすとんと入ってきたの。特別何かきっかけがあった訳じゃないんだ。だけど香苗ちゃんを見た時から、ずっと俺の心の中から消えないんだ」

「一目惚れって・・・。私に何があるわけでもないのに」

「人を好きになる過程は人それぞれ。香苗ちゃんがそう思っていても、俺には十分好きになる魅力があったんだよ。だから、君を好きになった。それ以外に何もない」

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