あなたと恋の始め方②【シリーズ全完結】
第五章

恋の甘さ

 そっと身体を起こすと私の身体には小林さんの逞しい腕が絡みつくようになっていて、ずっと昨日の夜からこうだったのだと思い知る。小林さんに抱かれたことで私の中に生まれた感情は『愛しい』というもの。抱かれる痛みは想像以上だったけど、それさえも愛しく、大好きな人の特別になるという意味も小林さんは教えてくれた。


 何度も私の名前を甘く囁きながら夜を過ごした小林さんも今はぐっすりと眠っていて、その眠っている顔を見るだけで胸の奥がキュッとなる。


『幸せです』


 そんな言葉を心の奥底で呟いて、そっと身体を捩るとスルリと小林さんの腕が動く。私の身体には小林さんのシャツが着せられている。私は小林さんのシャツを着た覚えはないという現実が顔どころか一気に身体の体温を上昇させるのを感じずにはいられなかった。


 自分で着た覚えがないのだから着せてくれたのは小林さんだと思う。でも、当の小林さんは上半身は裸のまま寝ていて、下は…布団が掛かっているので見えない。視線を映すとベッドに下には重なるように脱ぎ棄てた衣服までもが絡みあうように置いたままだった。そんな現実味溢れる光景に一層、顔も身体も火照る。



 とりあえず着替えをしないとと思い、小林さんの腕から抜けようとすると、キュッと腕の力が強まる。その腕に力は強引ではないけど、かといって、寝ているとは思えなかった。


 小林さんの顔を見ると、目は閉じられたままで、規則的な寝息も聞こえていた。
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