あなたと恋の始め方②【シリーズ全完結】

好きの気持ちだけ

 私がフランス留学の話を断ったというのが研究所に広がるのに時間は掛からなかった。私の代わりに中垣先輩がフランス留学に行くことになるので、静岡研究所にとっては大きな打撃になるにも拘わらず、研究所の人たちは好意的に思ってくれていたのに驚いた。


 私よりも数段仕事が出来る中垣先輩が抜けるのだから、それなりの風当たりを覚悟はしていたのだけど、思った以上に全然大丈夫なので肩透かしを食らったようだった。


 でも、それには理由が隠されていたと分かったのはある日の昼休みの事だった。隣の研究室の女の子に『息抜きに美味しいものを食べにランチしよう』と誘われて、人気のあると言われるレストランに来た時のことだった。隣の研究室の女の子だけでなく他にも女の子はいて、私を含めて四人でのランチとなった。


 中垣先輩がカップ麺を啜っているのを横目に見ながら申し訳ないと思いつつも、久しぶりの女の子同士のランチに私は気持ちが高揚していた。


 頼んだのはパスタセットで、サラダやスープだけでなく、小さ目ではあるけど、デザートのケーキもコーヒーもついてる女の子の心を擽るようなランチが目の前に並ぶと顔が緩む。


『女の子に人気なの。この頃、忙しいからたまにはね』


 という女の子の気持ちも分かるから私も一緒にランチに来ることにしたのだけど、思ったよりもいい内容のランチメニューは嬉しかった。
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