御曹司と溺甘ルームシェア
2、突然の婚約者
「野々宮さま。カクテルドレス一点で八十三万円になります」

ブティックの店員が満面の笑みを浮かべ、ソファーに座っている私に声をかける。

「じゃあ、これでお願い」

私はスマホを操作していた手を止め、バッグから赤い財布を出してクレジットカードを抜くと店員に差し出した。

冷泉の衝撃のキスから二週間経った。

あのキスの後、私は鷹頼に連れられ、ホテルの一室で休んだ。まずは顔を冷たいタオルで冷やし、身体中をスポーツで使う冷却スプレーで冷やして痒みを抑えた。

全身に広がったじんましん。放置しておけば、呼吸困難になることもある。

医者に処方してもらった薬を飲んでベッドに横になった。

私も鷹頼もこういう時の対処はもう慣れたものだ。万が一の時の薬は常に携帯してるし……。

何かあった時は当然のように鷹頼を呼び、こいつはぶつぶつ不平を言いながらも私の元に駆けつける。
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