強引同期が甘く豹変しました



「いや、ちょっと待って。あの時はちょっと事情があって…ああ言ってしまったというか」


「事情?何の事情だよ?」


「や、だから……事情は事情っていうか」


「は?全く答えになってねーし。しかも、あれからしばらくはわざとらしく俺を避けるような真似して……あの頃は本気でお前にムカついてたわ」



呆れたような矢沢の声が、目の前から小さく聞こえた。


だけど本当に事情は事情で、それ以外の言葉が見つからなかった。

伝えたくてもうまく言えなくて…なんだかモヤモヤした気持ちばかりが膨らんだ。


言っていいのかいけないのか…数十秒ほど自分の中で自問自答を繰り返したけど。



今ならもう、あの頃のことを話しても大丈夫なんじゃないかって…。

あれはもう、過去の話だしって。


最終的にそう思えた私は、矢沢に話すことにした。

あの時の、ことの真相を。

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