溺愛伯爵さまが離してくれません!

甘ったるい香り

「―――おはようございます、伯爵さま。起きて下さい」

結局昨日も明け方近くまで戻られなかった伯爵さま。
今日はやけに甘い女物の香水の移り香が、部屋中に充満しています。

・・・さては湯あみをせずに寝てしまわれたのか。

私は顔を歪めながら、部屋の窓という窓を全開にしました。
窓を開けると、ひんやりとした空気が部屋中を駆け巡ります。

「・・・う・・・。さ、寒いよ・・・」

寝ぼけたような声を出しながら、伯爵さまは掛けている布団を頭まで掛けようとしました。
それをすかさず阻止する私。

「早く起きましょう。起きて湯あみをなさって下さい。香水の香りがすさまじいですよ?」

「・・・ううん・・。あ、ごめん・・・。そういえばそのまま・・・」

「全く、アルフォンソ家の当主とあろうお方が・・・」

ふん!と力を込めて、布団をはぎ取りました。
相変わらずのあられもない姿。

がしかし今日はさらに酷い。

身体中一面に広がる薔薇の痕。
思わず目を背けてしまいます。

「・・・恥ずかしいものを見せてしまったね」

意地悪な笑みを浮かべて、そう話す伯爵さま。

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