恋は天使の寝息のあとに
第一章
***


今朝は至っていつも通りの日曜日の朝だった。


「べぇろべぇぇぇろばあぁぁぁ」

彼が顔を歪めた。
すましたときの端正なそれは、面影すら残らない。
子どものおもちゃ箱をひっくり返したかのように滅茶苦茶にとっ散らかる。

きゃっきゃっ

崩れたその顔を見ながら、私の娘――心菜(ここな)が無邪気な笑い声を上げる。
それを見て気を良くした彼は、より一層表情を歪ませる。

きゃっきゃっきゃっ

毎週見ているこのくだり。目にタコができそうだ。


「かぁわいいなぁぁぁ心菜はぁぁぁあ」

テンションが最高潮に達した彼は、まだ十キロ満たない心菜をひょいっと持ち上げて、自分の肩に乗せた。
普段見ることができない空からの視点に興奮した心菜は「あーっ!あーっ!」と元気な声を上げている。
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