パズル
暗中模索
カリカリカリ…。

静かな部屋に、シャーペンの音が響く。


来週の期末テストに向けて、僕はひたすら問題を解く。


デジタル時計に秒針は無く、人通りの少ない路地には車も通らない。

締め切った窓。


僕の部屋に存在する音は、シャーペンの音とペーパーノイズ、そしてたまに消しゴムが擦れる音。





ジリリリリリ…ッ。

デジタル仕様のベル音は、すぐ僕に消された。


階段を降りてトーストを食べる。

隣では父さんがコーヒーを飲み、庭では母さんが花に水をやっている。



僕が半分位トーストを食べた時、父さんは職場へ向かった。

父さんは県立病院の外科医をしていて、忙しいのか、僕とはほとんど口を聞かない。


母さんはおしゃべりで、最近、父さんと仲が悪いみたいだ。

僕は父さんに勉強ばかり求められる。

嫌われたくなくて、僕はひたすら勉強する。


僕の成績が良いと、父さんは機嫌が良くなって、僕や母さんに優しくなる。


家の状態は、半分以上、僕の成績で決まる。


朝食後に手早く制服を着て、栗色の髪にワックスを付けた。


「…行ってくるね。」

母さんに声をかけて、僕は家をでた。
< 1 / 4 >

この作品をシェア

pagetop