一番星にキスを
《prologue》一番最初に見える星


 春が終わりを告げ、やってきた新緑の季節。まだもう少し先なのに、もうすぐにでも夏が来るよと騒いでる。今日は部活がない。放課後、足早に校舎を去ってスーパーに寄った。お肉が良いものがあったから今日はハンバーグでも作ろう。

それから、家に帰って洗濯物を取り込んで......ああ、そういえば弟の(なつめ)が今日は友達を呼ぶって言っていたっけ。しまった、ジュースって残ってたかな。でも、両手には既に重い買い物袋が二つ。後ろには置き勉せずに毎日持ち帰りする教科書がたくさん入ったリュックもある。流石に水物がこれ以上増えるのは困る。仕方ない。最悪、コンビニで買おう。

そうして、思考を巡らせながら学校からの帰り道を歩いていた時、肩に鈍く衝撃が走る。重い物を持っていた私はバランスを崩して転んでしまった。痛みに顔を歪めると、よく知った声が振ってきた。


「すみません。大丈夫ですか?」


 ミルクティー色の髪が陽光を浴びて輝く。印象的なヘーゼルの瞳が不思議な魅力を放ち、捉えた。どう考えても校則違反の髪色と、これまた注意されそうなくらい気崩された制服。色白な整った顔が私の顔を覗き込んだ。とても有名な人。今年同じクラスになった藍木涼耶(あいきすずや)君だ。学校の女の子たちは彼を王子様でも見るかのような目で見つめる。それはうっとりと、夢を見るように。


「大丈夫です。こちらこそ考え事していて、すみません」


 クラスメイトであることに気付いていないようだったから、適当に合わせて答えた。だが、すぐに気付いたらしい彼はハッとした表情をした。


「あれっ、甘楽さんだよね......。って、うわーっ、ごめん!」


 自然と差し出された手。ふと、学校の多くの人が羨むんだろうと思った。私は素直にその手を取る。立ち上がると、膝に痛みが走った。どうやら膝を擦りむいたみたいだ。血が滲む膝は結構痛い。


「わっ、血滲んでるし。ほんとごめん!」

「気にしなくていいよ」

「いや、結構血流れてるし。どこかで洗わないと...近くに公園なかったっけ?」


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