恋する想いを文字にのせて…
7通目……最後のお便りです
最上 来未から届いた5通目の便りの冒頭は………


『もしかしたら、これが最後のお手紙になるのではないかと思います。』




(やっぱりか……)



前回送ってしまった内容を思い出した。

自分の文面に彼女が怯え、文通そのものを断ってくるのではないかと危惧していた矢先に届いた手紙。


先を読みたくない気持ちに襲われた。

便箋を手にしたまま、オフイスの窓辺に近づく。

葉の落とされた樹々達は、裸ん坊の枝を露わにしているだけだった。

寒そうな樹木を見つめながら、仕方ないことなんだ…と何度も自分に言い聞かせてから手紙を読み始めた。





『この度の小野寺様の手紙、少々恐ろしかったです。

内容もさることながら、貴方様を怒らせるようなことを書いた自分が情けなくもあり、先ずはお許し頂きたいと願い筆を取りました。』


丁寧に綴られていた文字は、そこから少し乱れ始めた。

なんとか取り繕おうとしている様が、文字に現れているような気がした。



『端的に申しますなら、私も小野寺様にお会いしたいと願っていました。

会ってお話をしてみたい気持ちは、最初にお便りを頂いた時から持ち合わせております。

まさか、その同じ思いを小野寺様が抱いておられるとは思わず、先に津軽先生のお名前を出してしまったことをどうか謝らせて下さい。



本当にごめんなさい。


津軽先生にお会いすることは、確かに長年胸の奥に秘めてきた願いです。

< 42 / 179 >

この作品をシェア

pagetop