ディスオーダーⅡ【短編集】
33 → 雨が降らない区域
 僕の村は、よく雨が降る。おかげで水には困らない毎日で、作物も干からびる心配はない。充実した毎日を送っている。

 ――しかし、それは突然のことだった。僕の村に、突如として雨が降らない区域が現れたのは……。


「まただ……」


 激しめの雨が降る、とある日の午後。僕は家の中から、窓を通して“そこ”を見ていた。


「あら、またなの? レイン」


 キッチンで夕飯の支度をする母さんが、僕のつぶやきに反応して不思議そうに問いかけてきた。

 僕や母さんだけじゃない、この村の人みんな、突如として現れた謎の区域のことを知っていて、気味が悪そうに遠巻きに見守っている。

 やっぱり、気味が悪いというレッテルが貼られた以上、迂闊に近付こうとする者はいなかった。

 何が不気味か……って、そりゃ、その空間だけが切り取られたように雨が降らないのも不気味だし、そこだけ地面から草が生えないことはもちろん、空を見上げるとその区域のところだけ雲がないんだ。

 縦横1メートルぐらいの綺麗な正方形。

 くっきりと、その区域の部分だけ。

 ……気味が悪い他、ないよね。
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