ふたり
ふたり
 私は工藤リナ。
 学校でいじめにあっていた。
 うちはシングルマザーだから、その母に心配掛けたくない。

 
 そんな時、SNSで相談している相手がいた。
 田代清(50)。
 彼には私と同じ年の娘が居るから、自然と私は心を開いていた。

 彼とは、SNSでやりとりを繰り返し、やがて半年が経った頃に会うことに・・・

 
 緊張はしたが、私は父親のように感じていた彼に会ってみたかった。
 そして、会った。

 実際会ってみると、予想通り紳士的な人だった。おそるおそる組んでみた腕が温かかった。

 それから、私は頻繁に会うようになった。
 
 そんな田代さんは、私にとって優しくてゆっくりと甘えさせてくれる父親みたいで、
会っていることが実は嬉しくてたまらなかった。

 そんなある日、街はクリスマス・・・
 街中がカップルで賑わっている。
 この日私は田代さんと食事の約束をしていた。
 他人は、クリスマスの会っている20歳前の私と50歳の田代さんを見てなんと思うだろう。

 いつものように食事のために会うのだった。
 カップルが待ち合わせる場所と少しずれたところで田代さんと会った。
 すると、田代さんは

    今日はクリスマスだ、フレンチでも行くか?
 と優しく、けどちょっと格好良く言ってくれた。

 私はドギマギしながら、頷いて、横に寄り添った。
 ドアを開けてくれ、二人で座った席は一番奥だった。
 そこからは、ライトアップイングリッシュガーデンがよく見えた。

 私はまだ未成年ということで、シャンパンをとってくれ、彼も美味しそうに飲んでくれた。
 最高の時間だった。
 しかし、私は少し酔いすぎていた。
 
 だから、気がついたとき、私はホテルの客室内にいた。
 私は服を着ていたが、ダブルベッドに座っていた。
 酔った頭がゆっくりと冷め始めてやっと回りを見ていた。

 その寝顔だけでは分からなかったが、肩を押しながら
     田代さん、どうしたの?
     田代さん。
 と呼びかけたが、何も答えず、眉も動かさない。

 もう一度、肩を強く押して、大きな声で
     ちょっと、田代さん、起きて、起きてよ。
 と言いつつ、顔をよく見たが何の変化もなかった。
 もしやと思って心臓の音を聞いたが、何の音も聞こえなかった。

     彼は・・・彼は・・・死んでいた。
 私は呆然としつつ
     なんでどうして。
 と叫んだ。

 
 私はなにが起こったか、お酒がまだ残っている頭で必死に思い出した。
 すると、強烈な頭痛に襲われ、フラッシュライトのように、恐ろしいことを主出した。

     私がナイフで田代さんの胸を突き刺していた。
 もう一人の私が確かに、田代さんの胸を突き刺していた。

 私は高校2年生の頃、いじめにいじめていた、同じクラスの私に似た女子高生を。
 しかし、私はこれまで、私がいじめられている女子高生と思い込んでいた。

 幼い頃、私は信じていた大好きな父から裏切られそうになっていた。
 そのことを直感した私は、私の中の自己保存本能が働いて、無我夢中で父をナイフで刺した。

 私は幼い頃に二重人格者になっていた。だから、高校生の頃、別の私が女子高生をいじめていたのだ。

 いじめにいじめた。私は自分の心の悪魔のとおりに、楽しんでいじめていたんだ。
 そのあげくに、彼女は自殺した。自分で首を吊ったらしかった。

 だから、私はフラッシュバックしてしまった。
 お酒の力で、もう一人の自分が表に出てきて私の身体を支配した。

 また、裏切られる。どうせ裏切られるなら、先に殺せば良い。
 自分が裏切られて傷つくくらないなら、その前に傷つける相手を殺してしまえば私は死ななくて済む。
 また、殺してしまった。

 急いで死んだ、いや殺した田代さんの遺体をどこかに隠さなければ。

 私はクルマの運転が出来る。
 こっそりと自宅の車庫に駐車されていた、誰も使わない車を
こっそりと乗り回していたから、クルマの運転ができるようになっていた。

 部屋の中でクルマのキーを見つけて、田代さんが乗り付けていたクルマに田代さんを運び込んだ。
 そして、エンジンをかけて慎重にクルマを運転した。

 2時間運転して、私は山中に到着した。さらにもう一時間運転して、轍もないような山道を入り込んだ。
 私は穴を掘った、遺体を埋めるための穴を掘った。
 そして、田代さんを埋めてようやく土をかけ終わった。
 
 ほっとしたその瞬間に、私は正気に戻った。
 私は狂っていることに気付き、泣き崩れた。
 なんてことをしてしまったんだろう。

 私はこのままではヤバいと思い、学校を辞めて初めて一人暮らしを始めた。
 だが、私は一人暮らしの生活の中で、私の中の恐ろしい別の私の存在を消すことが出来なかった。

 
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