③愛しのマイ・フェア・レディ~一夜限りの恋人~
 2時間後。

「「ありがとうございましたぁ!」」

「ど……どうも」

 さっきまでは、オニのような形相をしていた3人に、満面の笑顔で見送られ、燈子はヘロヘロと門を出た。

 すると、今までどこに居たのか。社長の運転士がにっこり笑って立っている。

「お待ちしておりました。
では、次に参りましょうか」

「は、はいぃ…」

 うげっ、まだ何かあるのか。 思いながらも、既に抵抗する気力もない。
 燈子は導かれるままに、大人しくベンツに乗り込んだ。

 知らなかった。
 美しくなる努力って、辛くて苦しいモノなのね…


 運転士さんの案内で着いた先は、燈子では冷やかしでも入れないような高級ショップ。

 
 やけに落ち着いた
「いらっしゃいませ」の声と、居合わせたお客さんの冷ややかな眼差しに気後れしながら、トータルコーディネート15000円弱の女、赤野燈子はこそこそと奥へ連れられてゆく。

「三鷹様から承っております」

 スタッフルームに入るとすぐ、美しいマネキンを思わせる無表情な店員が、燈子の採寸を始めた。
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