Butterfly
3.現在と過去
警察署に着き、市谷さんに連れて来られたのは、ドラマでよく見る取調室。

年期の入った灰色の事務机を挟んで、私と、可月さんを逮捕した女性刑事が向き合っていた。

女性の後ろ側には、可月さんを連行した刑事・・・佐渡と呼ばれていた男性と、蒼佑さんが立っている。

佐渡さんは二十代後半ぐらいだろうか、黒縁眼鏡をかけていて、色が白く、冷たい感じのする人だ。


(なんだか、すごく居心地悪いな・・・)


三人からの、突き刺さるような矢の視線。

蒼佑さんはずっと無言で、苦しそうな、怒ったような顔をしていた。


(そうだよね・・・)


彼女の私が、ホストクラブにいたなんて。

やっぱり、行く前に事情を話しておけばよかった。

そうしたら、少なくとも今とは違う展開になっていたはず。

私は、あの時下した決断を、今更ながらに後悔した。


(・・・さっきまでは、市谷さんもいたのにな)


市谷さんは、他の刑事さんに別件で呼ばれ、「後は頼む」と言ったきり、部屋からいなくなってしまった。


(市谷さんがいれば、少し安心感があったのに・・・)


確かに見た目は怖いけど。

里佳さんの旦那様だし、話に聞く感じだと、真面目で信頼できる印象がある。

それに。

さっき、車の中で話しかけてくれたのは、私を心配してのことだと思った。
< 61 / 186 >

この作品をシェア

pagetop