フラワーガーデンへようこそ〜優しい愛をあなたに〜
5月ブロワリア(花言葉:あなたは魅力に富んでいます)
…それから、かすみと薫は、順調に付き合っていた。でも、2人とも何かと忙しく、キス以上に中々発展せずにいた。

「…私って、そんなに魅力無いのかなあ」

自販機の前、かすみは一人、そんな事を呟やいてみた。

…手も繋ぐし、抱きしめてくれるし、キスもする。…でも、それ以上に発展しない。

付き合ってまだ日は浅い。しかも、会う時間も短いのだから、そう言う事に発展しなくてもおかしくないのだが、やっぱり、それ以上を求められたいと、どこかで思ってしまう。

「…遠藤かすみさん、貴女はとても魅力的ですよ」

その声に驚いて、思わずジュースの缶を落としてしまい、その缶が、足の上に落ちた。

痛みのあまり、かすみはしゃがみ込み足を押さえる。

「すみません、大丈夫ですか⁈」

声の主が、慌ててかすみに駆け寄り、かすみの顔を覗き込む。

…未だに、男の人は、薫以外は苦手なかすみは、痛みより驚いて固まる。

「…せ、専務」

かすみに声をかけた主は、この式場の専務をしている、神崎岳(かんざきがく)(30)、仕事が出来るイケメンの岳は、たくさんの女性スタッフ達の憧れの的。しかも、独身という事もあり、玉の輿を狙う女はたくさんいるとか、いないとか…

「…足、大丈夫ですか?」
「…ぇ、あ、はい」

ジュースを取ると、スクッと立ち上がり、さっきの事はなかったことにしようと、頭を下げ、かすみは逃げようとした。

「…遠藤さんはとても魅力的ですから、自信を持ってくださいね」

何て事を聞かれたんだと思いながら、かすみはオフィスに早足で帰った。

「…可愛い人だ」

岳の声は、かすみには聞こえない…
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