やさしい先輩の、意地悪な言葉
恋する時間
神崎さんにフラれてから、一週間経った。
会社ではもちろん今まで通り顔を合わせるけど、特別気まずい思いもしていなかった。
神崎さんが今まで通り接してくれたのもあるし、私も、ちゃんと告白する前にフラれたからか、思ったより普通にお話できていた。


……でも、今後私たちの距離がこれ以上縮むことはない。それもよくわかった。




「ごめんな。俺が余計なこと言ったせいで」

日中、デスクで仕事をしていると、となりにふと二山さんがやってきて、私にこそっとそんなことを言った。

今、私たちの周りにほかの社員さんたちはいない。
私も、声をひそめて二山さんに返事する。

「そんな、二山さんのせいじゃないです」

私が神崎さんにフラれたことは、周りの人たちには一切バレなかった。フラれた時に神崎さんにも言われた通り、私たちはもともと社内でそこまで話す方じゃなかったし。
だけど、二山さんは私と神崎さんのことを応援してくれていたため、私と神崎さんの間の、はたから見たらほんのささいな変化に気づいてくれた。


「でもさ、俺が『祐介は遥香ちゃんに気があると思う』なんて言っちゃったから」

「いえ! 全然二山さんのせいなんかじゃないですよ! というか、二山さんがそう言ってくれたから、勇気を出して神崎さんをデートに誘えたんです!
結果的にはフラれちゃいましたが……ちゃんと告白する前にフラれたのもあり、傷も最小限に抑えられましたし……。
自分の気持ちを神崎さんに気づいてもらえて、心の傷も小さく済んで、今も神崎さんと普通に話せていて……むしろベストな状態じゃないかな〜なんて思っています」
< 115 / 134 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop