やさしい先輩の、意地悪な言葉
いっしょに飲んだ日
お互いにメモ帳を一冊ずつ購入してから、雑貨屋さんをあとにした。


そして、通りをふたりでゆっくりと歩きながら、気になるお店を見つけたら入って……という感じでその後の時間を過ごしていく。



時間は、あっという間に夕方になっていた。
夏だからまだ明るいけど、風が少し涼しくなってきた。


「少し早いけど、帰りが遅くなるのもあれだし、早めに夕飯食べに行こうか」

通りを駅の方へと歩きながら、神崎さんがそう提案してくれる。


……今朝の私は、今日は神崎さんと夕食までいっしょに過ごす予定はなかった。そこまで付き合ってもらうのは神崎さんに悪い気がしたし、神崎さんとそんなに長時間過ごせる自信もなかった。


でも、今は。


「はい。そうですね」


神崎さんと、もう少しいっしょにいたい……と思ってる自分がいる。
なんとなく、神崎さんも決して無理をしているわけじゃなくて、楽しいと思ってくれているから誘ってくれてるかな? なんて、うぬぼれかもしれないけど……そう思ってしまっている自分もいた。


「じゃあ行こうか。なに食べたい? 和食? 洋食?」

神崎さんはやさしく私に問いかけてくれる。
けど。


「あの……」

「うん?」


「よかったら、飲みに行きませんか?」



「え?」

神崎さんは一瞬驚いたような表情を見せると、すぐに、戸惑った顔に変わって。


「飲みはさすがに……」

「あ、あの! でも、二山さんが言ってましたよね、神崎さんはお酒に弱いけど、お酒を飲むのは好きだって!」
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