世界から君が消えた
Prologue



朝、学校へ行く準備をしながらテレビを付けた。


着慣れた制服に着替えながらテレビに耳を傾ける。


女の人が淡々とニュースを読み上げていた。


『今日午前2時頃、青山町の駅近くのマンション前で頭から血を流した女の人が倒れていると、そこに住む男性が近くにある交番に行き通報。その後、戻ってみると女の人の姿はなく、現場にはその女の人のものだと思われる血痕が残っていたそうです。警察は事件性があると判断をし、現在捜査を進めています。』



青山町は俺が住んでるところ。

駅までは車で10分ぐらいだ、結構近いな。


とはいっても、俺には関係ないし。


そう思ったのも束の間。


次に耳に届いたニュースキャスターの言葉に、俺は目を見開いた。


『只今、新しく入ってきた情報です。被害者は“川村 七海”、16歳。青山高校に通う2年生で、事件当時、家族は旅行に行っており、不在。被害者は家に一人だったとのことです。未だ、川村さんの行方は分からず、警察は捜索範囲を広げ、捜索中です。』



テレビに写し出された被害者の顔に、俺は見覚えがあった。


顔も、名前も、学校もあってる…川村さんだ。



「嘘だろ…。」

なんて呟いても、何かが変わるやけじゃない。


朝に弱く、少しボーっとしていた頭が目を覚ました様だ。



もっと詳しく知りたいと思ったが、テレビの中ではもう次のニュースが流れていた。


最近、急に人気の出てきたアイドルのコンサートの映像だ。



暫くフリーズ状態でいると、


『只今の時刻は8時3分。天気予報の時間です。』

「へ?」

時刻を知らされ、確かめる様に時計を見ると、8時3分を指していた。


「ヤッベ、準備出来てねぇ!」

急いで準備をしていると、テレビでは天気予報が流れていた。


『今日は全国的に雨が降るでしょう。出掛ける時は、傘を忘れずに。』

テレビを消し、傘を掴んで家を出ると、立ち止まった。



「…何で…いるの……?」

「山崎くん…」

おぼつかない足取り、微かに動いた口から溢れる言葉。


そして、倒れる体を間一髪で支えた。



ーー助けて


倒れると同時に聞こえた小さなSOS。



「川村さん……?」

目の前にいるのは、ついさっき見た顔。

テレビのニュースで映し出された顔。


この状況に頭がついて行かず、思考は完全に停止していた。


ただ、倒れる寸前に君の頬を伝った涙が、目に焼き付いて離れない。



まただ……。



同じ様に俺の頬を伝う誰かの涙。


音を立てて地に滴り落ちた。


これが、彼女との2度目の出会い。



2度目の……SOS。


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