ウサギとカメの物語 番外編

*堅実な男の何気ない一言*



こんな時に頼りになる……というか、俺の愚痴を一方的に聞いてくれる親友がいる。
それは、同期の須和柊平だ。


奈々と同じ事務課に所属していた彼は、これまた同期の大野梢といつの間にか付き合っており、牽制されていた部署内社内恋愛が上にバレて本社から泉営業所に異動になった。
で、その1ヶ月後に、まさかの大野と入籍。
で、その5ヶ月後に結婚式。
で、そのあとすぐに新婚旅行。
で、その1ヶ月後に大野が妊娠した。


アッパレ、親友。
君は着実に素敵な人生を歩んでいる。


柊平とは大学が一緒で、学部も一緒で、偶然にも就職先まで一緒で。それで仲良くなった。

ヤツは昔から1ミリも変わらない。
基本的にあまりしゃべらず、非常にマイペースで、あまり表情を出さず、他人に興味が無く、そして無類の酒好き。
酔ったところなんかは見たことがない。
介抱されるのはいつも俺だった。
いつの間にか彼女が出来て、いつの間にか別れている。そんな感じ。
聞かれなければ自分の話はしてこない、究極の聞き役。

どうして馬が合うのかと言えば、おそらくそれは、俺がおしゃべりな男だからだろう。


そんな彼に先を越されるとは予想外だったけど、よくよく考えれば柊平は堅実な男だ。
仕事も黙々とこなしているし、無駄遣いをしている所を見たことがないし、車は純正だし、これといった趣味はボルダリングのみ。


そんな男が、今、目の前でビールを飲んでいる。


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