【改訂版】ワケあり上司とヒミツの共有

同期入社の咲希子

「お疲れさまです」

そう言いながら秘書課の扉を開けた瞬間、

「ちょっと!どうなってんの!?」

と、同期入社で一番仲の良い、伊永咲希子(いながさきこ)(24歳)が、いきなりどアップで詰め寄って来た。

「わあっ!ビックリした!」

余りの勢いと顔に、後ずさる。

「どう言う事なのって聞いてんの!」

「いきにり何?何の話??」

主語がなくて、どうやって分かれと言うのか。私の頭の上には、いくつもの「?」がふよふよ浮遊する。

「津田部長の事!」

……あ、なるほど。その事か。

「どう、って……?」

「付き合ってんの!?」

「う、うん、まあ……」

偽装だけどね。でも津田部長に「誰かに聞かれたら付き合ってるって言う事!」と言われているので素直にそう答えた。一番仲の良い咲希子にウソをつくのは心苦しいけど……。

すると、秘書課に居た咲希子含め全員が、「えぇーっ!!」と叫んだ。

「な、なによっ」

私はその叫び声に耳を塞ぐ。

「やっぱり本当だったの!?」
「美園先輩、ずるーい!」
「いいなー!」
「津田部長はみんなのものなのにー!」

と、みんなが発狂し出す。中には本気で泣き出す子もいた。

……はは、予想はしていたけど、ここまでとは。

それにしても……。

「津田部長って、そんなに人気あったんだね」

そうボソッと呟くと、

「あったり前でしょー!?あのルックスで仕事も出来てフリーなんて、狙ってる子なんざごまんといるわよ!それを、何にも興味無さそうにしていたあんたが……!」

咲希子がハンカチを取り出し、ムキーッ!と噛み締める。

「うん。なんかゴメン」

なんか分からないけど、とりあえず謝った。

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