彼女のことは俺が守る【完全版】
『里桜。仕事頑張ってくる』


 そんな海斗さんのメールに今、自分が居る場所を見渡す。この部屋に一人で暮らすようになって、一週間が過ぎている。好みの家具と雑貨に囲まれた生活は何一つとして不自由がない贅沢な生活。自炊も始めたからか、一段と自分の生活する空間という認識も深まっている。


『頑張ってください。身体だけには気を付けてくださいね』


 そんなメールに海斗さんはすぐに返信をしてくれた。


『ありがとう。里桜』


 画面に浮かぶ文字を見ながら、私は海斗さんのことを思い出す。少しの時間しか一緒に居なかったから、まだよく海斗さんのこと知らない。知らないのに好意を持ってしまった私はきっと将来辛い思いをするだろう。


 優斗のこと。友達のこと。そして、海斗さんのこと。


 自分を見直す時間が必要だった。


 時間だけはゆっくりとそして確実に過ぎていく。


 朝になると起きてすぐに海斗さんの寝室に行き、窓を開け空気の入れ替えをする。そして、私が会社にいく前に閉める。これは毎日の日課になりつつある。最初は躊躇した海斗さんの寝室も今では緊張せずに入ることが出来る。


 掃除機を掛けたり、棚の上の埃を払ったりとしていると、不思議な気分になる。私が自分の部屋とリビングを掃除するついでの掃除なのに、ドキドキしたりもする。食事をする度に今、海斗さんは何をしているのだろうかとか、考えたり…。
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