彼女のことは俺が守る【完全版】

苦しみの結婚式

 私が起きたのは本当に起きないといけない時間よりもかなり早い時間で、目覚まし時計を掛けたわけでもないのに、私の目蓋はゆっくりと開かれた。ベッドの中で自分の身体を抱きしめながら、もう一度目を閉じる。ギリギリと締めつけられるように胸が痛い。


 今日という日が来て欲しくなかった。


 今日は元カレである優斗と元友達との結婚式でそこには私の高校の時の友達も大学の時の友達もサークルの友達も皆が揃っているのだろう。そんな中私は結婚式に参列出来るのだろうか?


 一緒に居てくれると言った海斗さんを信じてないわけではない。でも、自分に浴びせられる視線に耐えられそうもないというのも素直な気持ちだった。確かに私は何も悪いことをしてはいない。でも、周りから見れば、三年も付き合った彼を友達に取られた女でしかない。


 きっと、口々に私の事を話すことだろう。


 実際に振られた男の結婚式に乗り込むなんて、考えてみればどうかしているのかもしれない。


「こんな朝から胸の奥がこんなにも苦しい」

 
 ゆっくりと身体を起こすと、まだ濃紺色の空に光の筋は見えない。そして、私の気持ちもまだ固まらなかった。ここまで来て逃げるのはよくないと分かっているのに、私は怖さのあまりに逃げたくて仕方ない。


 自分の顔を手で覆うとどこかで優しい声が聞こえたような気がした。


『里桜のことは俺が守るよ』



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