彼女のことは俺が守る【完全版】
第四章

彼と私の距離感

 記憶というのは綺麗に書き換えられるものかもしれない。そう思ったのは私が数時間の後に目を覚ました時に思ったことだった。私は自分の部屋のベッドに寝ていて、辺りは真っ暗になっていた。まだ明るい時間に帰ってきたはずなのに、もうこんなに真っ暗というのは私がかなりの時間を寝てしまっていたということだった。


 泣きすぎたせいで少し頭がぼーっとする。でも、気分はそんなに悪くない。


 ゆっくりと身体を起こすと私は結婚式に着ていったドレスのままで、ベッドの横にあるサイドテーブルの上に借りていたアクセサリー類と髪留めが置いてあった。


 マンションの部屋に帰ってきてから、私は自分を支えきれずに涙を流した。そして、海斗さんはそれを受け止めてくれた。海斗さんは泣き続けた私をここまで運んでアクセサリー類を外してくれたのだろう。


 かなりの時間を泣いたと思う。


 思いっきり泣いたからか、心の何処かに残っていた優斗への思いも元友達への思いも殆どが流れ出したような気がする。そして、私の胸にポッと小さな光が宿ったのにも気付いてしまった。


『海斗さんが好き』


 一番傷ついた時に出会ったから好意を持ったと思いたかったけど、自分が優しくされたくらいで恋をするなんて思いたくなかったけど、私は海斗さんへの恋心を自覚してしまった。


 自分の気持ちは誤魔化せない。


『海斗さんが好き』
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