彼女のことは俺が守る【完全版】

自分の思いと覚悟

 高取さんの言葉は間違ってないのだろう。海斗さんにとっても一番いい事だろうというのは私にも分かる。海斗さんを見ると、唇を嚙みしめ、そして、何かを必死に考えているように見えた。私のことを一番に考えてくれるのは嬉しい。でも、私は…。二人で一緒に焼肉を食べながら話していたことを思い出していた。


『今度の役をきっちりこなせたら、俺は変われそうな気がする』


 そう言って笑っていた海斗さんが私には眩しかった。海斗さんの為に何か出来たらとさえ思った。今の私に出来ることは一つしかない。海斗さんが望まないとしても…。


「なら、どうするんだ。海。今回の映画には力を入れていただろう。その苦労を水の泡にするつもりなのか?」



 映画公開前にスキャンダルとなるということの意味を私は知らない。撮影もまだ残っているから、これからの撮影に響くだろうということくらいは何となく分かるけど、それ以外にも何かあるのだろうか?


「高取さん。もしも結婚しなかったらどうなるのですか?」


 そんな私の言葉に高取さんも海斗さんも驚いた顔をして私の方を見た。そして、先に口を開いたのは海斗さんの方だった。



「里桜は何も気にする必要ない」


「今回の映画は純愛をテーマにして制作されています。そんな映画の主演俳優がスキャンダルとなると損害が生じるのは仕方のない事です。金銭的なこともありますが、一番はこの映画自体が見直されるかもしれないということです。私は篠崎海のマネージャーとしてそれだけは回避したい」

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