彼女のことは俺が守る【完全版】

結婚会見

「篠崎くんにとてもお似合いだと思いますよ。高取。手順の確認と打ち合わせをしないといけない。篠崎くんのこれからのこともあるし、今はこの状況をどうにかしないといけない。里桜さんは藤堂さんにお願いして、高取は二人を控室に案内してから会見場の方に来るようにしてくれ」


 海斗さんの会社の社長さんは穏やかな中にも適切な指示をしていく。今はゆっくりと挨拶をしている状況でないのは私にも分かる。そして、時間も迫っているのも分かっている。海斗さんのことだから大丈夫だと思うけど、私の存在が海斗さんの迷惑になるのではないかと思うだけで胸が張り裂けそうだった。


「里桜さんと藤堂さんを控室に案内してから会見場に向かいますので、先に行っておいてください」


 そんな高取さんの言葉を聞きながら、海斗さんは私の方を見つめていた。視線が絡むと穏やかに微笑んだ。その綺麗な顔には何かを決意したような表情が浮かんでいる。今から記者の集まる会見場にいくとは思えないくらいだった。


 海斗さんは何を考えているのだろう?


『大丈夫』


 そう海斗さんは唇を動かしてから、私に頷いて見せてから会見場の方に歩いて行ったのだった。私はその真っ直ぐな背中から視線を外せなかった。


「里桜さん。行きましょう」


「はい」


 高取さんが私と雅さんを案内してくれたのは、会見場から離れたホテルの一室だった。今日はここを控室に使っているのだろう。

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