彼女のことは俺が守る【完全版】
 私は彼と結婚するつもりだった。彼からのプロポーズを待ち侘び、綺麗に化粧してここで待っていた私は余りの滑稽さに笑いが出る。なんて馬鹿だったのだろう。



「じゃあ、里桜。今から、新しいマンションの下見に行くの。新居にも遊びに来てね」

「里桜。またな」


 言いたいことだけ言い放ち、二人は何事もなかったかのようにその場を後にする。そんな後姿をボーっと見つめる私は余りにも吃驚しすぎると涙も出ないということを初めて知った。彼女と彼の衝撃な告白を聞いても、心が動かない。動かないから涙も出ない。私は完全にフリーズ状態だった。壊れたブリキの玩具の如く私は目を見開いたまま息さえも忘れていた。


『里桜のことが大事だから中途半端なことはしたくない。一緒に住むならそれはきちんと挨拶をした後だね』


 全てが壊れたと思った瞬間だった。


 茫然とする私は一気に肩から力が抜けるのを感じた。自分の身の上に降りかかった出来事があまりにも衝撃過ぎた。失恋なら世の中にいくらでもある。でも、高校の時からの友達に三年も付き合った彼を奪われ、その元彼と元友達の結婚式に招待されるなんてありえない。でも、それは現実で、息をするのを忘れるくらいに私は身体を強張らせていた。

 こんな仕打ちが待っているとは思わなかった。

 
 
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