居場所をください。

それぞれの居場所。




それからはとくに会話もなく

年が明けたばかりの東京の景色を

流れるように見ていた。


いつもとはちょっとだけ違う景色

夜なのに明るくて、人が多くて

カラフルで、きれいだった。


「……あ、ここ長曽我部さんの

マンションの近くだね。」


「そうだな。

あと10分もすりゃつく。」


そういえば、あのマンション

最近全然いってないや。

あんなに通ったのに、今じゃもう

合鍵も使うことは全くといってない。


……でも、明日籍をいれるなら

もう行くことはないかな…


「……弘希たちとは

もう一緒に住んでるの?」


「いや。

っていうか引っ越す。」


「え、そうなの?」


「だから前に一緒に家具

見に行ったんだよ。下見。」


「ふうん……

いつ引っ越すの?」


「もう鍵は受け取ってあるから

まぁだんだんな。

弘希の希望でまたマンション。

弘希ももう高校卒業だし

まぁマンションのがなにかと楽だしな。

売るにもな。」


「え、買ったの?」


「そうだよ。」


「ふうん……」


まぁそうだよな。

お金はあるんだもんな。




< 4,284 / 4,523 >

この作品をシェア

pagetop