居場所をください。

弘希side




***



「なに、ケンカ?」


「だな、完全に。」


ふーん。あの二人、ケンカとかするんだ。

ベタベタなくらい好きなくせに。


「長曽我部さんは普段は怒ったり

ああやって感情的なことは言わないんだよ。

怒るときは徹底的に論破するから

こっちはなにも言い返せなくなる。

美鈴も普段からあんま言い返す方じゃない。

だけどあの二人になると

しょっちゅうケンカしてんだよ。

まぁいつの間にか機嫌直って

勝手に仲直りしてたりするけど

ごく稀に、大喧嘩するときもあるけどな。」


「大喧嘩?したらどうなんの?」


「長曽我部さんがかなり落ち込む。」


「え、まじかよ。」


父さんのそんなとこ

見たことねーんだけど。


「長曽我部さんって大人だから

基本的にはいつもうまく付き合うタイプで

言い合いってまずならねーんだけど、

美鈴に対しては感情的になるんだよな。」


ふーん。

まぁ兄妹だからそんなもんなのか。


俺にはよくわかんねーけど。


「もう、うるさいなぁ!」


お、美鈴もキレてる。

そういや美鈴がキレることも

あんまりないよな。

俺と初対面の時は機嫌悪かったけど。


「やばい、だんだんヒートアップしてきた。」


「え?」


貴也のその声を聞いてると


「だから美鈴の今後のためを思って

言ってやってんだろうが」


という父さんの声が聞こえて


「もう長曽我部さんは

私のマネージャーじゃないんだから

いちいちそういうこと言わないでよね!

これからは上田さんの指示に従うんだから!」


と美鈴が言い返し


「あーあ、言っちゃったよ…」


と小声でうなだれた貴也。



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