居場所をください。

長曽我部ひかる編




美鈴のスタジアムツアーも終わり、デスクワーク生活が始まって数日


「佐藤、貴也のスケジュールこれじゃダメだろ。
これはどうすんだよ。」


「すみません、すぐ調整します。」


貴也と美鈴の新婚旅行のため、佐藤の仕事が山積みになっていて
それなのにチーフマネどもは仕事をバンバン取ってきてて

……いや、いいんだけど。
佐藤が可哀想になってくるわ。


「今日中になんとかして、スケジュール提出しろよ。」


「はい。」


……ま、佐藤はいいんだよ、まだ。
頑張りすぎてるところもあるから心配になるけど頑張ってくれるから。


「山村さん、今日どこします?」


「あ、俺いい店知ってんだよ~」


……大忙しの佐藤に比べて、こいつらはまだ朝だっつーのにもう夜どこに飲みに行くかの相談。
そりゃ今日は土曜日だけど。


「山村、高城。
そういう話は昼休みにやれ。
そんな暇あったら仕事一本でも多くとってこい。」


「あ、長曽我部さん…」


「すみません
気を付けます」


……俺が近くにいると知ればこの態度。
気を付けます、って何度目だよ。


で、俺が佐藤のところに戻れば


「ほんっとにうるせーわ」


「早々に出世して社長の子供はいいですよね」


……そんな嫌われ役も、もう慣れたわ。


「長曽我部さん」


「…あぁ、佐藤。どうした?」


「今美鈴から連絡が来て、旅行前に髪の毛を切りたいそうです。
あと4日で出発ですけど、ほぼスケジュールが埋ってまして…」


「はぁー?美鈴今ごろそんなこと言い出したのかよ。
ったく…」


自分が過密スケジュールなこと、知らねーのかよ。こいつは…


「……つっても予約もそんな急に取れねぇし。」


「夜にしますか?
そしたらここのインタビューをカットします?
情報誌ですし、今ならまだ断れますし。」


「……いや、そのインタビューのあと詰め込もう。
23時過ぎには終わるだろ。」


「え、でも次の日8時入りですよ?」


「まぁ仕方ないよな。そもそも美容院は仕事でもねぇし。
だいたいあいつ、この前染めたばっかだろ。」


「わかりました。
じゃあそのように連絡しておきます。」


「頼むな。」


……じゃ、俺は美容院の予約、と…
23時40分にはつくかな…


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