魅惑な彼の策略にはまりました
③実践的講義が始まりました



外は2月でもスタジオの中は暖かい。

この日、私は麻布スタジオの事務所で仕事をしていた。

大学卒業後、番組制作会社でこき使われること5年、28歳の時に貸しスタジオを運営する女性社長に拾われこの会社に転職した。
それから6年、一応社内でもそこそこ責任のある立場になり、自分の思う通りに仕事ができるようにはなった。

同年代の女子と比べたら収入も悪くない。
山手線内側の築浅マンションで一人暮らしできるくらいはもらってる。
好きなお酒は飲めるし、年一回は海外旅行も行けるから、切り詰めている感はない。

友達はまあまあいる。業界の大人な知り合いもいる。日々の暮らしは順風満帆なのだ。
……恋人がいないという点以外。

部下の留美子が事務所に顔を出して大声を上げた。


「四季さーん、搬入ありましたけど、Bスタに置いちゃっていいですかー?」


「北野テレビは明日でしょ?今日Bスタに入れたら、午後の撮影どうすんのよ。ガルマガの撮影入ってる!」


「あ、そっか。すみませーん、勘違いしてましたー」


留美子がバタバタと出て行く。
25歳の彼女はおっちょこちょいの明るいタイプ。騒がしいけれど、憎めない部下だ。

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