恋のお試し期間
こんな私じゃダメですか?


「駄目だったんだ」
「うん。駄目だった」
「彼女いたとか?でも事前にリサーチしてたんでしょう?」
「居ないって話だったはずなんだけどね。良いようにはぐらかされて
私の何がダメなのかちゃんと理由は言われなかった。
本命が居たとしてもたぶん私じゃ遊ぶ女にすらならんということですよね」
「自虐しないでよ。里真。あんたは努力したよ。がんばったって」
「ははは……」

頑張った、か。頑張るってなんだろう?隣で聞いてくれている友人は
ものすごい美人という訳でないけれど、男が途切れたことがない。
告白するよりされるほうが多いという。何が違うの?雰囲気?お化粧?
努力?そんなに私はダメ女?そんな事をふと思う夜の居酒屋。

だけど、ふられても自棄酒に付き合ってくれる友人が居る事が何よりの宝。
安い酒片手にしみじみと思う。こんな時ほど女の団結は固いのだ。
明日は仕事が休みだし今夜は思いっきり愚痴ってこの鬱憤を晴らそう。

「あ。ごっめーん彼氏から電話だ」

なんてそんな事はなかった。やけに電話が長いから嫌な予感がしていたけれど、
案の定友人は彼の元へと帰っていった。何でも風邪ひいたとか。
若干顔がニヤついていたからそれも本当かどうか分かったものではない。

けど、それを引き止める事は出来ないしそんな事したら余計惨めだ。



「それで。自棄酒は止めてやけ食いに来たと」
「マルゲリータ」
「もう食事は作ってないんですけど。
それにこんな時間にそんなに重たいの食べていいの?」
「マルゲリータ」
「酔っ払いさん。聞いてる?ウチは20時からはバーになるからツマミしかないよ」
「……じゃいい」
「夕飯まだだから俺に付き合ってくれるなら特別作ってあげる」
「何処で待ってたらいいですか?」
「そちらの席へどうぞ」

宝だったはずの友人にあっさりと裏切られて1人店を出た里真。
タクシーを使って家まで一直線も考えたけれど、足は自然と帰る途中にあるお店へ。
酒も入って呂律も怪しい、ハッキリとした意識もないのに。
何故かここで何か食べたいと思って。いや、我侭をいいたいと思って。
そんな気持ちを見透かされたように彼は苦笑いしながら客の居るフロアとは
少し離れた席に案内してくれた。





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