恋のお試し期間
私だけが知らなかったの?



日曜は運動も兼ねて街へ繰り出す。
ウィンドウショッピングを適当にしていれば知らず知らずに結構歩いていて
運動になる。という里真の計算で。ショッピングと言っても給料日前であまり
余裕は無いので本気で買う気はないから適当にぶらぶらと。

本当なら隣に彼氏が居たはずなのに、いや、考えるだけ損。


「次の彼はそういう服が好きなんだ」
「違います。これは私の趣味」

ぼんやり眺めていたら後ろから声がして振り返ると何処かお高そうなお店の
紙袋を持った佐伯が立っていた。店はお休みらしい。普段着の彼を見るのは
久しぶりかも。今日は眼鏡なんかして雰囲気ががらりと変わってこれもオシャレ。
スタイルも抜群に良いからどこから見ても隙がないというか、
モデルさんや俳優に見える。

「へえ。可愛いのが好きなんだ。似合いそうだね」
「佐伯さんこそ買い物ですか」
「今日は久々にお休みだから。里真ちゃんも?」
「ええ、まあ」

笑ってみせるけれど内心大焦り。知った顔と会うとは思ってなかったから
服装もメイクもどれをとっても休日のだらけきったもので手抜き丸出し。
相手がオシャレなだけにとても居づらい。里真はここから脱出する事を考える。

「もし予定が無いのなら俺とデートしない?」
「でも」
「無理にとは言わないけど。でも1人より2人の方が楽しいよね」
「まあ…確かに」

先週なんか1人で部屋で寝てた侘しい休日だった。
それを思うと佐伯のお誘いは実に魅力的だ。侘しくない。
行き交うカップルを見てもイラっとしない。

「じゃあ決まり。行こう里真ちゃん」
「いいんですか?私あんまりその」
「いいよ」
「そんなアッサリ」
「さて何を見ようかなあ」

俄然やる気を見せる佐伯に連れられて普段は通り過ぎるだけの店に入り
服を見たり小物を見たり。基本理真の好みそうなお店ばかり彼は選ぶ。
幾ら社会人でもクレジットカードは持ってないしこの財布の中身ではとても買えない。
服どころかバックチャームでさえ無理。こんなことならお金下ろせばよかった。

「佐伯さんは笑顔で高い買い物させようとする悪魔のようなセールスマン」
「君に似合うと思うのにな。プレゼントするし」
「怖いですよあんな高いの」
「そう。じゃあ。クレープでも食べる?」
「はい!…あ、うーん…はい」

葛藤したけどクレープの甘い香りには勝てず、今まで歩いたんだしという甘えもあり。
佐伯にクレープをおごってもらう。やっぱり甘いものは美味しい。もっと食べたい。
自腹でもう1つ買いたいと思ったけれど我慢。ここで調子に乗ると意味がなくなる。



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