あなたのヒロインではないけれど
第7話~キャンディとカギ








「キャンディ、もういいの?」

「ミャオ」


ご飯をすっかり食べ終えた白猫は、定位置に腰を落ち着けると満足そうに顔を洗い始めた。ペロペロと体を舐め毛繕いもする。


小さなマットはキャンディのために敷かれたもの。氷上さんが考え抜いて買った……。


「…………」


キャンディが食べ終えた容器をシンクで洗いながら、ぼんやりと考える。なんでこんなことになったんだろうと。


だけど、キャンディはそれを許してくれなくて。私のすねを前足でトントンと叩いてきた。


どうやら遊んで欲しいらしい。


「あ、待ってね……ちょっと火を止めるから」


ガスコンロで煮込んでいたカレーの火を止め、キッチンから離れて紐を取り出すと。早速キャンディは飛び付いてくる。まだ子猫と言っていい年齢だから、一度遊び始めるとすごい運動量で。


階下の迷惑にならないようにクッションを敷いた上で遊ぶこと30分。どうやらご主人様が帰宅したらしく、キャンディはまっしぐらに玄関に走っていった。


……秋の気配が漂い始める9月の終わり。私はなぜかこうしてたまに氷上さんのマンションを訪れるようになっていた。


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